データガバナンス戦略にマスターデータマネジメントを組み込むメリット

私はデータガバナンスの専門家として、データガバナンス戦略へマスターデータマネジメント (MDM)を組み込むべきかどうか、という質問をよく聞かれます。その答えは確実に「YES」です。

インフォマティカのデータガバナンスフレームワーク(およびほとんどの業界標準のデータガバナンスフレームワーク)は、マスターデータを全体的なデータガバナンスプログラムの主要コンポーネントとして位置付けています。

インフォマティカの提供するマスターデータおよびマスターデータマネジメントの概要ガイドでは、マスターデータとマスターデータマネジメントの違いについて説明しています。

マスターデータとは、企業のビジネスにとって重要であると見なされ、2つ以上のシステムまたはビジネスプロセスで使用するために必要な、共通のコアエンティティとその属性・値を指します。

マスタデータの例には、顧客、製品、従業員、サプライヤ、所在地のデータなどが含まれます。マスターデータは、組織内の多くのチャネルやアプリケーションに散在していることが多く、内容が重複・矛盾するデータ必ず存在します。その結果、複雑性が増すことになります。

マスターデータマネジメント (MDM)は、マスターデータを作成し、企業の記録システムとして維持するための管理プロセスです。

MDMは、マスターデータが正しく、一貫性があり、完全なものであることを保証するために実施されます。さらにオプションとして、MDMは処理内容に応じてマスターデータが循環することを保証するために実装することができます。これは、マスターデータを内部または外部のビジネスプロセス、アプリケーション、ユーザーによって消費できるようにするためのものです。

MDMは最終的に、テクノロジー、人材、ポリシー、プロセスを組み合わせた、幅広いデータガバナンスプログラムの一部として展開されます。


MDMをデータガバナンス運用モデルに組み込む:

MDMをデータガバナンス運用モデルに組み込むには、いくつかのアプローチがあります。以下の図で示す例では、特定のビジネスユニットにおけるデータ所有者または責任管理者が、そのデータに関連する意思決定を行う権限を持っています。一般的に、データの所有者は、ドメイン固有のデータに関して最も情報に基づいた決定を下すことができます。

また、MDM例外報告や、効果的かつ一貫性のある変更管理プロセスによって、ビジネスに可視性がもたらされ、既存のワークフローやプロセスで生じるギャップが明らかになります。

さらに、ソースでの変更を可能にすることで、最終的にデータ品質(データガバナンスプログラムの別の重要なコンポーネント)を向上させることができます。

ここで、Heartland Financial USA, Inc.(現HTLF)の事例をご紹介します。同社では、MDMとデータガバナンスを活用することで、ビジネスユーザーがデータから最大の価値を得ることができるようになりました。


ケーススタディ:Heartland Financial USA, Inc.

目標:顧客中心の「トップダウン」からアカウント中心の「ボトムアップ」へ

契機:この企業の場合、顧客情報の表示と管理の方法を変更することがカスタマーエクスペリエンスを改善するきっかけとなりました。

課題:HTLFのビジネスユーザーは、アカウント単位での顧客管理に大きく依存しています。銀行システム内において、顧客は様々な方法でやりとりをするため、このような管理は必ずしも完全とは言えません。また、顧客の「変更」を追跡・管理することもHTLFの大きな課題となっています。

背景:顧客情報がさまざまな異種システムで収集・保存されており、単一ビューで顧客を把握することが困難な状態でした。顧客は、1)複数のアカウントを持ち、2)さまざまな製品ラインにわたって多数のサービスを活用し、3)プロファイルやアカウントを通して複数の関係性を築いています。

これは、顧客にとっては通常の動作です。しかし、重要な顧客情報をさまざまなソースで収集・保存するシステムにとっては、必ずしも通常のワークフローとは言えないのです。

顧客の全体像を把握するために、HTLFのビジネスユーザーは、さまざまなシステム間で顧客・アカウントデータを照合・結合するコードを開発する必要がありました。そして、その照合・結合のプロセスにはさまざまな課題がありました。データの「整理」に膨大な時間を費やす必要があっただけでなく、統合されるシステムの数や手作業の量が多く、分析の質も低かったのです。

さらに、手作業ではデータ品質を低下させる可能性のあるビジネスプロセスに関する潜在的な問題を把握することができず、繰り返し発生する問題を特定し、修正することが困難でした。

さらに状況を複雑にしていたのは、住所や名前の標準化など、重要な照合データの初期データ品質が保証されていなかったことです。そのため、照合能力が低下し、全体的なデータ品質が低下していました。


MDMとデータガバナンスを実現するソリューションとアプローチ

Heartland FinancialのSVP(シニア・バイス・プレジデント)/CDO(最高デジタル責任者)兼エンタープライズデータ&アナリティクス担当パトリック・テリー(PatrickTerry)氏は、HTLFが顧客中心となるために、顧客データを習得することを優先すべきだと判断しました。

また、社内で抱えている照合・結合の課題の解決に向けて、迅速に対処する必要がありました。エンドユーザーに提供する価値として、テリー氏は以下の実現を試みていました。


1.信頼の高い唯一真実の顧客データを提供する(これにより、データの取り違えを減らす)。

2.ビジネスユーザーが、顧客データの入力や処理に関連するビジネスプロセスの問題を特定し、修正できるようにする。

3.顧客の完全な360度ビューを実現することで、顧客データに対するより良い洞察を生成できるようにする。


データガバナンスの支持者として、テリー氏は、投資を最大限に活用するためにはデータガバナンスとMDMを同時に実現することが重要だと認識していました。

テリー氏は「MDMはガバナンスの実行部分であり、データガバナンスはその実現部分です。」と述べています。

また、能力、機能、インフォマティカとのビジネス上の整合性といった観点から、インフォマティカのCustomer 360やData QualityがHeartland Financialに最も適していると判断しました。

さらに、テリー氏とチームはMDMの導入と並行して、人材、プロセス、テクノロジー、データをサポートするデータガバナンスの運用モデルを実現できるような企業戦略を策定しました。

データガバナンスの運用モデルには、所有権の割り当てとプロセスの定義を通じて、MDM ワークフローを管理するプロセスが含まれます。


次のステップ

テリー氏と彼のチームは、特定の業務部門内でデータガバナンスの運用モデルを確立する過程にあります。今後は、その業務部門と協力してプロセスやワークフローを定義し、プログラム全体を試験的に実施するとともに、他の重要なデータ領域や組織階層を把握する計画も立てています。

価値の推進、ロードマップの構築、データ戦略・プログラム・プロセスの設計については、インフォマティカのサポートセンターまでお問い合わせください。


本ブログは2021年11月19日のNATALIE GREENWOODによるThe value of incorporating Master Data Management into your Data Governance strategyの翻訳です。