最高データ責任者(CDO)のコミュニティ構築

企業の成長戦略においてデータはかつてないほど重要な要素となり、それに伴いデータ管理者の重要度も急激に増加しています。昨今のデータ管理者は、ガバナンスを率いたりデジタル改革の中核を担うほか、運用や分析のプロとしてビジネス上で幅広い役割[1]を求められています。

こういった状況を踏まえ、インフォマティカでは最高データ責任者(CDO)のエグゼクティブアドバイザリーボード(EAB)を設立しました。EABの目的は、世界中の業界をリードする企業や公的機関のCDO、データ戦略エグゼクティブ間における多様なコミュニティをまとめることにあります。世界的なリーダーシップを担う存在として、EABでは洞察のシェア、アイデアの追求、課題解決、戦略のテストなどを行い、データ主導の革新へとつなげることで、ビジネスや世界全体の改善を目指します。

3月にオンラインで行われた最初のEABの会合では、モントリオール銀行、ジャナス・ヘンダーソン社、ウエストパック銀行をはじめとするさまざまな組織のCDOやデータ管理のエグゼクティブが揃い、データ文化の構築、優秀な人材の獲得と維持、組織内におけるデータリテラシーの基盤を固める方法などについての意見を共有しました。公共部門、金融サービス、ヘルスケア、電気通信など、業種はさまざまですが、全体で共通していたのが、組織が成功するかどうかのカギを握るのはデータであるということでした。

迅速なデータ変換の内部ビュー

会合では、オバマ政権にてチーフ・データサイエンティストを務めたD.J.パティル(DJ Patil)氏をスペシャルゲストとして迎えました。パティル氏からはカリフォルニア州における新型コロナウイルス感染拡大対策をサポートしたことに関する興味深いお話をいただき、とても充実した議論を交わすことができました。

初期の段階では、パティル氏のチームにはほとんどデータが揃っておらず、クルーズ船の乗客に関する統計がわずかにあるだけの状態でした。そこで、多くのエンジニアやジョンズ・ホプキンス大学のチームと連携をとり、病院のデータを収集、調査することで、現状を把握し、州が今後とるべき対策の指針となる予想モデルを構築しました。この経験をもとに、パティル氏は組織が着目すべきポイントを6つに分けて紹介しています。

1.はじめから大きく動こうとしないこと。大切なのは、基本的な部分です。データが不完全であった場合、適切な予想モデルを構築することができません。そのためチームでは、はじめのころはあらゆる場所に存在するデータのクリーンアップ、重複の排除、信頼性の確保といった作業を毎日5時間かけて行いました。

2.データの辞書を作ること。チームには素晴らしいリポジトリがありながら、それが全く活かされていない状態でした。長い間、低品質なデータをもとに分析をしていた状態だったのです。そこで、すべてのデータがアクセスしやすく扱いやすい状態になるよう整える必要がありました。

3.難しい課題に対応できるような基盤を整えること。はじめに基本的な部分をマスターしたうえで、データセットを迅速に管理し、アップデートする基盤を作ります。そうすることで、感染率と社会経済の関係性など、より複雑な課題に取り組むことができるようになります。

.毎日、少しずつ改善していくこと。パティル氏は、オバマ政権で行っていたインテリジェンス・ブリーフィング(国際情勢について、大統領が日常的に受ける簡単な状況説明のこと)をチームにも取り入れました。すると、チーム全体の分析力が日に日に増し、4週間後には多くの結果が得られるようになりました。

5.異なるデータを活用すること。チームでは、レストラン予約アプリのOpen Tableから得られた匿名データを分析することで、非常に有効な洞察を得ることができました。ベイエリアに位置するレシートのデータ量が、ロサンゼルスで得られるデータ量と比べて2週間早く減少したことから、南カリフォルニアでの感染率が北カリフォルニアよりも高いことが立証されました。

6.才能を最大限に活用すること。データの専門家は、難題を与えられないと不満を抱くものです。その真価は、切迫した状況でこそ発揮されます。

良質な判断を下すために、適切なプロセスを踏む

データは時として、人々にとって都合の悪い真実をさらけ出すものだとパティル氏は述べています。カリフォルニア州の経済は、世界の国と比較しても第5位に相当する規模を持ちます。しかし、カリフォルニア州の感染率データを考慮すると、その経済活動をシャットダウンする必要性が示唆されているのです。パティル氏はさらに、説得力のある主張を行うために、データのチャートに頼るだけではなく、ポイントをメモに取ったうえで情報提供のミーティングを行うことを勧めています。人々に情報が共有されることで、意思決定を行うためのミーティングへと進むことができます。

データを人に提示する際には、次の3つを念頭においておきましょう。そのグラフから何を読み取ってほしいか、相手にどういった行動をとってほしいか、そして、高揚、心配、恐れなど、どのような感情を抱いてほしいか、ということです。もしあなたが、例えばホワイトハウスのシチュエーションルームのような非常に緊迫した空間にいる場合、注意事項を確認している暇はありません。そのため、上記の3つのポイントを正確に把握しておく必要があるのです。

CDOが抱いている懸念事項

パティル氏のセッション後、インフォマティカのデータガバナンスおよびプライバシー担当バイス・プレジデントのスーザン・ウィルソン(Susan Wilson)から「CDOとして最も懸念していることは何ですか?」という質問が投げかけられ、興味深いディスカッションを行うことができました。ディスカッション中、実際に挙がった意見を匿名でいくつかご紹介します。

・関係者の中には、データ中心の組織を築くには単純にデータを取り入れさえすればすべてのトラブルが解決すると考える人もいる。しかし、データマネジメントは利害関係者の全員が取り組まなくてはならない課題であり、(たとえばAIアルゴリズムへ不正なデータの取り込みを停止させるなど)基本的な部分を大切にしなくてはならない。

・優秀な人材を獲得、維持し、日ごろから意欲を持って活動してもらえるようにするのが非常に難しい。

・戦略を展開する際、経営幹部や利害関係者は確信を持って物事を進めることが求められる、その確信が欠けている場合があり、時には大きなチャンスを逃す恐れもある。

・データコミュニティとして、自分の組織は非常に遅れており、改善できる点が多くあると感じる。新たなプロジェクトを始める際は「これまでの問題を一掃するのではなく、ひとつひとつを正しく行うことが大事だ」とチームに伝えようと思う。

・ビジネスにデータ文化をとり入れる際、AIや機械学習、データガバナンスや信頼性の高いデータの保有する可能性を従業員たちに理解してもらうことが難しいと感じる。組織間の連携をスムーズにするためにも、データリテラシーを周知させることや、第二言語としての機能を果たすようなデータの構築が非常に重要だ。

・現場で作業するチームとデータの健全性に重点をおいて戦略を採用、実装することを自分の組織では大切にしている。

・データを活用することで、感動やインスピレーションを生み出すことを大切にするべきだと感じる。データはすべての仕事に関わるものであるため、安全性が高い設計であることやアクセスしやすいことが求められる。データは、人々の生活にインパクトを与える可能性を大いに秘めている。

緊急な要件だけでなく、何が重要なのかを考える

終わりに、今回のディスカッションでパティル氏や参加者から得られたアドバイスをいくつかご紹介します。まずは、ウィンストン・チャーチルの言葉もあるように「この危機を無駄にしない」ということです。誰もが各自でウイルスについての情報収集を行っている現在、データを活用する必要性がこれまで以上に高まっています。組織は異なるデータセットを使用し、これまでに行ってきた意思決定のパラダイムを見直す必要があります。

そして、緊急性の高い要件だけではなく、重要性にも注視するよう心がけましょう。緊急性の高さだけにとらわれるのは、小学生のサッカーのように、チーム全員がひとつのボールに群がってしまっているような状態なのです。ですから、チーム内でタスクを分け、それぞれが分散した状態を作りましょう。問題を一掃することに集中しすぎず、長期的な目線で成功につながる構造を作ることが大切です。


[1] IDC社 InfoBrief、インフォマティカ協力、「現在のCDOの優先順位、課題、およびKPI(“The Priorities, Challenges, and KPIs of Today’s CDOs,”)」、IDCDoc #US46695720、2020年8月。


本ブログは2021年7月12日のJitesh GhaiによるBuilding a Community of Chief Data Officersの翻訳です。