顧客中心主義を実現させる4つのビッグデータ機能

顧客中心の戦略とは?

顧客中心主義とは、物事の考え方であり、文化であって、無意識的なレベルで取り入れるべきものです。顧客中心主義は組織内の全従業員が顧客に焦点を合わせ、すべての意思決定や行動の中心に顧客を置いたときにのみ実現することができます。端的に言えば、顧客中心の戦略はより優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供するカギとなる存在なのです。

競争力の高い組織であるためには、顧客中心のアプローチをビジネスに取り入れることが必要不可欠です。過去と比べて、現代では顧客により多くの選択肢が与えられており、サービスを受けるブランドをすぐに変えることができます。さらに、組織同士の競争は各業界の中だけとは限りません。さまざまなエクスペリエンスに関するビジネスの競争が、複数の業界にまたがって発生しているのです。靴、保険、ヘルスケアなど、何を購入してどのようなサービスを受けるかに関わらず、B2C(企業対顧客)とB2B、双方の顧客は、あらゆるエクスペリエンスが限りなくシンプルになることを望んでいます。

すべてのソースにおける顧客データを網羅し、信頼性が高くインテリジェントなビューを作成したり、チャネル全体の洞察を行い、パーソナライズされた質の高いやり取りを行うのに役立つのがデータやビジネスアプリです。優れたデータが揃うことでカスタマーエクスペリエンスが改善され、競合他社と差別化をはかることができるようになります。

パーソナライズされた良質なエクスペリエンスを提供する企業は、他社と比べても一歩抜きんでた存在と言えます。このような優位性を得るためには、取引の各段階で自信を持って正確にそれぞれの顧客を認識し、セグメント化をはかるとともに、オファー、やり取りをカスタマイズできるようなデータが必要です。

顧客中心主義におけるビッグデータの役割

顧客データは大抵の場合、一貫したガバナンス、認証、標準化などが部門間で共有されておらず、データ収集も偶然に頼るほかありません。そのようなデータは正確性やコンプライアンスに欠け、チーム全体でのデータ使用を困難にするとともに、コストの増加を招く恐れがあります。

顧客中心的なイニシアチブを見据えたデータ主導の企業に必要なのは、長期にわたる高品質なデータの収集、サポートです。自社のデータが「非常に良い」品質であると考えている組織はわずか16%です。質の低いデータを備えていては狙った効果が得られず、カスタマーエクスペリエンスの悪化も促します。データ主導であることとは、データに十分な投資がなされ、必要なときに的確なデータを確実に得ることができ、高品質なデータに基づいて意思決定やプログラムを導き出せるような状態を意味します。

いつくかの顧客中心のプログラムでは、ビッグデータのテクノロジーを用いることで基本的な要求に応えられる仕組みが作られています。膨大な量の顧客データは、まずデータレイクやクラウドデータウェアハウスといった大規模なデータ機能に読み込まれます。しかしこの時点では、規模、速度、頻度、複雑さに関係なく、データは単なるデータでしかありません。テクノロジープラットフォームを問わずデータ管理を行うためには、共通した原則と機能が必要です。

ここ十年でのデジタル移行により、ビッグデータの種類や規模が大幅に増加しました。

すでに多くの企業が、さまざまなシステムやアプリケーションを通して顧客データを収集しています。しかし単にデータを集めるだけでは、顧客中心的なエクスペリエンスを効果的に提供することはできません。サイロ化を防いだ状態でデータ接続や強化を行うとともに、情報を求める人々に対して実用的な洞察を提供する必要があります。データが保管されている場所、データを統合する方法、ビジネス変革に適したデータの利用方法などを、企業全体で把握しておくことが大切です。

データ機能による顧客中心主義の実現

テキサス大学の調査によると、フォーチュン1000社が保持しているデータの使いやすさを10%改善するだけで、平均して年間20憶ドル以上の収益増加が見込めるとされています。

顧客中心的なビジネスモデルを実現させるためには、IT組織内での運用リスクとコストを削減しつつ、効率的なデータアクセスやデータ管理が行え、適切な情報を下流部門の業務や顧客向けのシステムに配信できるようなテクノロジーが必要です。

顧客中心主義のカギとなる4つのデータ機能

顧客中心主義の実現に欠かせない4つのデータ機能についてご説明します。

機能その1:データの検索と統合

顧客中心主義へ向けたデータ主導のアプローチとして最初に挙げられる重要な機能は、所有している顧客データがどのようなものか把握し、そのデータの場所や、カテゴリを特定するということです。正式には「データディスカバリ(データ検出)」と呼ばれるこのステップは、異なるシステムに保存されている全顧客データと関連データを識別、カタログ化、分類するプロセスです。データディスカバリが目指すのは、保存されている情報を正確に理解し、そこから価値を引き出せるようにすることです。

データは組織内のあらゆる場所に散在しており、複数のカテゴリに分類される可能性があります。そのため、このステップでは、情報の検出、分類、保護、共有を可能にするデータカタログを備えたツールを導入することをおすすめします。このようなツールは、非構造化データを特定、保護することで、規制要件を満たすのにも役立ちます。扱うデータ量が多く、手動でのデータディスカバリが困難となっている現代では、こういったツールは欠かせない存在です。

機能その2:データの質を高め、保証する

続いての重要な機能は、求めるデータが正確かつ完全であるかを確認することです。データのクレンジング機能により、システムから不正確、不完全、無関係なデータを削除または修正することにより、全体的なデータ品質を高めます。

データディスカバリと同様に、これまで手動で行っていた作業は特定のツールや人工知能 (AI) によって自動化することができます。データクレンジングというソリューションでは、データの品質や有用性を損なうデータの削除や修正を行います。データ品質が目指すのは、組織全体におけるデータの一貫性、完全性、正確性を確保し、均一化することです。

データは、クレンジングを行うことで品質を高めることができます。データの品質が優れていると、処理や分析が容易になるとともに、より優れた意思決定やカスタマーエクスペリエンスの提供にもつながります。

データがクリーンな状態になると、社外のソースからエンリッチ化することが可能です。顧客プロファイルをエンリッチ化する外部ソースは多数あり、顧客に関して、以下のような情報を購入することができます。

・年齢

・配偶者の有無

・収入

・職業

・住居のタイプ

・購買行動

・学歴

・車の所有

・Facebook/LinkedIn/Twitterアカウントの有無

・位置

・子供の有無

・大都市か地方か

・民族性

・意見や動機

・金融商品

・通勤パターン

・チャネル選好

顧客の年齢、性別、好みといったデータ要件を把握することで、より多くの顧客を惹きつけることができるようになります。それぞれの顧客に対して関連性の高いことを絡めたコミュニケーションを通して、適切なタイミングで実現可能なオファーを行えば、顧客獲得のコスト削減につながります。また、そこから得られる洞察を既存の顧客に対して反映させることで、より適切な時間や場所を選び、メッセージングを調整することができます。

機能その3:データの管理と配信

顧客データの検出、クレンジングが済んだあとは、企業全体のさまざまなソースに散在する関連データを統合し、管理する必要があります。一貫した顧客データのビューを提供することで、チャネル、地域、事業分野全体におけるシームレスなエクスペリエンスの実現を目指します。

データ統合ツールを用いて異なるソースからデータを収集し、標準形式に変換する作業を行います。そのため、幅広いソースシステムですぐに使用できるコネクタを提供し、システムやアプリケーションに必要なデータを確実に配信できるような統合プラットフォームが必要となります。

顧客中心の戦略において、個人を特定できるような情報(PII)をはじめとする顧客データを守ることは非常に重要です。例えば、GDPR(EU一般データ保護規則)、Know Your Customer (KYC)、HIPAA(医療保険の携行と責任に関する法律)といった、各業界や政府の定めるプライバシー規制に違反した場合は、罰金が科せられます。しかし、それよりも重要なのは、データの使用や管理能力に関して信頼を失うと顧客を遠ざけるリスクを加速させてしまうということです。

機能その4:データから実用的な洞察を導き出す

信頼性の高いデータの基盤があり、高品質で一貫性のある顧客プロファイルが整えられたところで、顧客中心主義の実現に本腰を入れることができます。データ戦略において重要なのは、ビジネスや分析アプリケーションに対して、顧客データの単一ビューをどう配信するかということです。ここでの決断が最終的に従業員へと伝わり、顧客中心のプログラム、取り引き、キャンペーンなどの質を左右することになります。

顧客プロファイルを使用するアプリケーションには、CRMアプリケーション、注文管理アプリケーション、財務および請求システム、コールセンターシステム、人事システム、マーケティング自動プラットフォームが含まれます。

顧客の期待に沿ったエクスペリエンスを提供するには、販売時点管理(POS)、カスタマーサービスのヘルプデスク、キャンペーン管理、マーケティング分析といったアプリケーションを顧客データによって活性化させることが重要です。これは、信頼性の高い単一ビューの情報源を全従業員が共有している状態が整ってはじめてできることでもあります。

データは、検出、統合、クレンジング、管理、そして安全性の確保といった過程を経て、使用可能となります。しかしデータをより効果的なデータ管理に向けて、企業はもう一歩先んじた行動をとることが大切です。つまり、データ品質に取り組むことで複数のシステムにまたがるエラーを減らす必要があるのです。すべての重要なビジネスデータに対して単一のマスターリポジトリを作成することで、ビジネスプロセスの最適化につなげることができます。

データ中心の機能によって信頼性の高い顧客データのビューを構築し、顧客中心のビジョンを実現させた組織の例をいくつかご紹介します。

・あるアウトドア向け娯楽用品の小売業者は、主要な事業や二次的なビジネスにおいて顧客に関する単一のビューを作成し、シームレスかつ全体的なカスタマーエクスペリエンスを提供するとともにマーケティングの精度を改善しました。タイムリーかつ正確な顧客情報を保持することで、販売、マーケティング、サービスの質の向上につながっています。

・ある国際的なソフトウェアプロバイダーは、顧客、見込み客、パートナー (B2B)のデータを整理された一貫性のある状態にすることで、製品ライン間の関係性を高め、より効果的なマーケティングキャンペーンを実現しています。

・あるヘルスケアプロバイダーは、すべての患者に提供されたそれぞれのサービスを病院のネットワーク全体で共有することで、治療の継続に役立てています。データや分析を活用し、健康診断をすすめるべき患者や何らかのリスクがある患者がすぐに分かるようにすることで、先を見越した医療アプローチを取ることができます。

マーケティング、販売、サービスにおける顧客中心主義

データが整理され、充実し、アクセス可能な状態になると、新たにパーソナライズされた顧客とのやり取りをサポートできるようになります。マーケティング、販売、サービスやサポートといった顧客対応では、データのニーズが変化したり、いくつかの課題が存在します。そのような中で、それぞれの顧客を適切なデータに結びつける必要があるのです。

マーケティング

何十年もの間、マーケティングでは“spray and pray(運任せ)”のアプローチによって新規顧客を獲得することにばかり目が向けられており、既存の顧客関係を維持し大切にすることが軽視されてきました。消費者の行動が変化し、デジタルチャネルが普及した現代では、こういった戦略で効果を得ることは期待できません。

データ主導のアプローチをとりながらマーケティングを行うと、見込み客の対象を絞り、データ情報に基づいた効果的なキャンペーンへとつなげることが可能になります。また、ウェブサイトやコンテンツをより正確にパーソナライズし、心情的にも顧客に寄り添うことで、最終的に大きなロイヤリティを生み出します。

販売

顧客中心の戦略を取り入れることで、営業チームの編成は製品中心から顧客中心へと改善されました。顧客にとって最適な製品をベストなタイミングで販売するためには、すべての取引やタッチポイントに関する顧客情報の全体像を把握しておかなければなりません。それぞれの顧客が、企業から提示されたマーケティングオファーをクリックしたかどうか、オープンサービスを求めているかどうか、ネットプロモータースコア(NPS)ではどのような反応を示しているかと言ったことを理解することで、企業は現状を把握し、それに応じた販売戦略を組むことができるのです。

顧客に関する幅広いビューを作成することで、企業側はより多くの情報に基づいた製品オファーを行い、効果的なクロスセル、アップセルへと導くことができます。また、その次にとるべき行動を見極められるようになり(何もしなくてもいい場合もあります)、複雑な企業同士の関係性 (B2B) を向上させ顧客への浸透率を高め、B2Cに関するインフルエンサーネットワークを理解することにも役立ちます。

サービス、コールセンター、サポート

コールセンターのスタッフは、顧客データへのアクセスが制限されていることがほとんどです。得られる情報は多くの場合、電話対応で伝えられたことに限られています。そこで、取引履歴や過去の通話記録といった基本的な情報をリアルタイムで提供できるようデータ接続することで、スタッフが全体像を把握し、顧客をより積極的にサポートする体制が整います。

情報に基づいたやり取りを行うことで、コールセンターの担当者は顧客ファーストで物事を考え、確かな情報を元に自信を持ってサービスを提供し、質の高いカスタマーエクスペリエンスにつなげることができます。

顧客中心主義へ向けたデータ主導アプローチから得られるメリット

データの質が向上することで顧客に関する可視性や理解が深められ、顧客中心のアプローチが改善されます。また顧客中心のビジネスを展開するうえで、マーケティング、販売、サービス、ITなどに関してデータ中心のアプローチをとると、数々のメリットを得ることもできます。そういったメリットの具体例をいくつかご紹介します。

・一貫性があり、正確かつ完全な顧客データと、カスタマーエクスペリエンスに影響を及ぼす全ドメイン(顧客、製品、サプライヤー、従業員、資産など)を網羅する単一ビューによってビジネスの敏捷性、生産性を向上する。

・オンプレミス、クラウドアプリケーション、ソースにわたって幅広い接続性を持たせることで顧客データの同期を容易にする。

・顧客データの管理を一元化、自動化することで、所有コストを削減しITの生産性を向上させる。

・顧客、製品、チャネル、顧客の関心事、取り引きの履歴をはじめとするデータのマッチング、クレンジング、リンク付けを自動化することでクロスセルとアップセルの成功率をあげ、より質の高いプロファイリング、セグメント化、製品の推奨を行う。

・製品の使用、顧客の行動、これまでのやり取り、サポート、満足度に関するデータの統合、マッチング、クレンジング、リンク付けを自動化することで、顧客維持とロイヤリティを高める。また、顧客がサービスを解約しそうな兆候を素早く正確に察知するとともに、パーソナライズされたオファーの改善も行う。

・チャットボットでの会話や、従業員による意思決定の精度を改善する。

・顧客にとって適切なタイミング、適切なチャネルを見極めることで、メッセージングやオファーの受け入れ率を改善する。

・優れたセグメント化、パーソナライズ、データ主導の洞察を行うことで、マーケティングキャンペーンの効果を高める。

顧客中心主義を実現させるデータ主導のアプローチを始めましょう

顧客中心主義とは、科学ではなく芸術です。そしてそこには、すべての決定や行動において顧客を組み込むような企業文化が必要とされています。データやテクノロジーに秘められた多大なる可能性を活用することで、顧客中心のビジョンを、従業員や顧客といった社内外の利害関係が確実に体験できるようになります。

データサイロの解消、データの品質とガバナンスにおける改善、顧客に対して完全かつ信頼性の高いビューを構築することなどによって、マーケティング担当者、販売者、サービスチームは、顧客を惹きつける有意義なエクスペリエンスを提供できます。

顧客データを最大限に活用できているかどうかは、Eckerson Group提供のCustomer 360に関する成熟度の評価にて確認することができます。こちらをぜひ、顧客データ管理の戦略における評価や改善にお役立てください。


本ブログは2021年4月19日のJennifer McGinnによるFour Big Data Capabilities for Customer-Centricityの翻訳です。