顧客中心主義と、その重要性について

顧客中心主義とは?

顧客中心主義とは、何事においてもお客様を一番に考え行動することを意味します。そんなことは簡単だと思う方もいるかもしれませんが、果たして本当にそうでしょうか?

顧客中心とは、単に顧客を最優先にするというわけではなく、顧客を理解することです。求められる要望やニーズを正確にとらえ、どのようなコミュニケーションをとるのが好ましいかといったことを予測し、有意義なカスタマーエクスペリエンスを提供することは、決して容易なことではありません。

顧客中心主義の組織では、企業と顧客、双方にとってベストな決断を下せるような体制を整え、従業員はその中で顧客理解に基づいた行動をします。さらに、ビジネス上の決定、プロセスの変更、顧客のタッチポイントなどが及ぼす影響を踏まえたうえでビジネスを展開しています。

顧客中心主義という戦略を立てる取り組みは、文化を築くこととほぼ同義と言っても過言ではありません。これらを顧客にきちんと認識されるためには、顧客中心の考えが組織内に深く根付いている必要があります。それを実現することによって、組織はより高い顧客定着率や紹介数の増加、プレミア価格の実現などを通して収益増につなげることができるようになるのです。

顧客中心主義がビジネスやブランドにとって大切な理由

「このブランドでは満足を得られない」そう感じた顧客は、他のブランドへと離れていきます。

あなた自身のお気に入りのブランドについて思い浮かべてみてください。企業において円滑なビジネス体制が整っている場合は、その顧客に適した方法でコミュニケーションを取ったり、顧客が買い物をしたいと思う適切なタイミングで商品の案内を送ることもあるでしょう。では、逆にそれらがあなたの要望と合っていなかった場合を想像してみてください。現代の消費者は、例えかつて好きだったブランドでも、気持ちが離れれば顧客であることを簡単にやめられるのです。実際、PwC社の調査では、顧客のうち3人に1人は、1度不快な思いを経験したらそのブランドを離れるという結果が出ています。

カスタマージャーニーには、ブランドを認知する、実際に商品を購入する、そのブランドを支持するようになる、といった様々な段階があります。顧客中心のアプローチを行うことは、そのすべての段階で利益をもたらすことにつながります。昨今のデジタル環境においてはよりパーソナルな部分に重点を置いているため、企業は顧客第一を理念に置くことで他社と差別化をはかることができるのです。

卓越したサービスを提供するノードストローム社を具体例として挙げてみましょう。ノードストローム社の実験店舗では、オンラインでの購入、商品の店舗受け取りに加えて、革新的なモバイルアプリなどを取り入れることで新たなサービスを展開し、顧客中心のデジタルショッピング体験を実現させました。

顧客中心プロセスの実践によって得られるメリットの最たるものは、顧客離れの防止です。新規顧客の獲得よりも既存顧客を維持するほうが容易かつ費用対効果も高いというのは、以前から言われてきたことでした。2014年のHarvard Business Reviewによる調査では、新規顧客の獲得は既存顧客の維持よりも5倍から25倍の費用がかかるという事実が強調されています。このような考えは新しいものではないものの、実際に新規の顧客よりも既存の顧客を優先している企業はあまり増えていません。それはなぜでしょうか?

顧客中心のビジネスが正しく展開された場合、顧客は必要なものを受けとるだけではなく、その企業では快適で摩擦のないサービスを受けられるのだという信頼が生まれます。例えば、箱なしの状態での返品、オンラインで注文後、店舗での受けとり、即時の払い戻し、オンライン注文後の迅速な配達(同日発送はおろか、注文の2時間後に受け取り可能という場合もあります)などを可能にすることで、顧客を長期にわたって維持することができるようになります。

顧客中心主義に向けて克服すべき3つの課題

繰り返しになりますが、顧客中心の組織になるのは想像以上に困難を要します。

理論的にはシンプルに思えても、現実的な面ではいくつかの課題が存在します。企業内における文化、組織構造、データやテクノロジーに至るまで、すべての面において顧客中心を念頭に置いて再編成を行い、得られるメリットを完璧に把握する必要があります。

顧客中心主義の課題1:企業内で一丸となって文化を築く

「顧客中心の文化を構築する」といった、あまり具体的でない課題は克服するのが難しいものです。文化は強制されることで出来上がったり、簡単に変えられたりするものではありません。また、計画したことが直接的に現実へ反映されるとも限りません。企業内で文化を築くためには、経営幹部をはじめとするすべての従業員が、顧客中心主義のもたらす変化を受け入れる必要があります。全員で信じ、実行し、成功に向けて動くことが大切です。長期的なビジョンが求められますし、ある程度のガイドに基づいているとはいえ、時には確証がなくても思い切って行動しなければならない場合もあります。さらに、単なる収益以上のものに焦点をあてる必要もあります。

顧客中心の組織に共通していることとしてまず挙げられるのが、顧客第一という価値観をコアに置いていることです。また、すべての従業員がこの認識でビジネス上の意思決定を行うことで、顧客中心主義の企業となり得ます。例えばインフォマティカでは「We DATA」という価値観を掲げており、その中の一つに「Think Customer First(お客様を一番に考える)」があります。弊社では全社会議のたびにこれを再確認し、この価値観を体現した従業員を表彰するなど、年次の業績評価に織り込んでもいます。従業員ひとりひとりが適切に考えて働くことができるようにすることで、顧客第一の環境が作られます。

顧客中心主義の文化を構築する方法として挙げられるのが、チーム内でいくつかの質問をし、その意思決定が顧客中心であるかどうかを考えるというやり方です。

・その新製品の紹介は、顧客にどのようなメリットをもたらすか?

・バックオフィスに新しいシステムを取り入れた場合、それによって顧客とのやりとりはどう改善されるか?

・この新しいプロセスは、顧客が不要と感じていた摩擦をどのように取り除くか?

こういった質問に答えられない、もしくは答えが不明瞭である場合は、その意思決定について再考する必要があると考えましょう。従業員それぞれが、何が顧客中心で何がそうでないのかということについて自ら考えて決定を下すことで、良い変化が起こるはずです。従業員たち自身が企業から十分にサポートされていると感じて自信を持つことで、極上の接客を行うことが可能になり、顧客から高い満足度と信頼を得ることができるようになります。

顧客中心主義の課題2:製品中心から顧客中心のビジネスへ移行する

ペンシルベニア大学ウォートンスクールのピーター・フェーダー教授による著書“Customer Centricity”では、過去10年の間に製品中心から顧客中心のモデルへと移行を成功させたスターバックスやノードストロームといったブランドについて解説されています。移行のポイントとなるのは、ブランドに対する顧客の行動が変化したこと、情報へのアクセスが改善されたこと、そして顧客のニーズをより深く理解し、求められるものを提供する能力が企業に備わったことなどが挙げられます。当たりを定めずにただ広く宣伝することよりも、精度の高い洞察を行うことが良い結果を導き出すことにつながります。

製品中心から顧客中心のビジネスへ移行することは、消費財産業以外のビジネスにも当てはまります。例として、銀行や保険代理店について考えてみましょう。かつては、所有しているアカウントごとに番号や担当者が異なっていました。それだけでなく、すべての顧客は名前ではなく、アカウントや番号によってのみ認識されている状態でした。結果として、過去に顧客とやり取りしたプロセスなどがサイロ化されてしまい、スムーズなサービスを提供することができなかったのです。同じ情報を何度も伝えられたり、すでに加入しているサービスを勧められたことがあるという人も多いでしょう。

こういった非効率性や質の低いカスタマーエクスペリエンスは、販売する製品を中心に据えるという従来の組織構造が招いたものです。これまで多くの企業が、できるだけ多くの人や組織にできるだけ多くの製品を売ることを第一に掲げたビジネスを展開してきました。こういった戦略は、製品に100%重きを置いており、顧客の好みに全く配慮していないのです。このように、当たるなら誰にでもいいとやみくもに製品を売ろうとする状態を、マーケティングでは“spray and pray(運任せ)”戦略と呼んでいます。

こういったアプローチは顧客を無視している可能性が高く、貴重な時間やコストの浪費、認識の行き違いを引き起こします。また、製品中心のビジネスモデルは、チームやデータのサイロ化を招く恐れもあります。多くの場合は、組織内で目標が統一されておらず競合したり、情報が重複し、一貫性が取れず断片化した状態になります。

製品よりも顧客に重きを置いた戦略やプロセスを経ることで、顧客中心主義に向けて大きな一歩を踏み出すことができるようになります。

顧客中心主義の課題3:データとテクノロジーを使いこなす

適切なデータ管理戦略が伴ったデジタルトランスフォーメーションの実践は、顧客中心のビジネスをサポートする役割を果たします。近年ではデジタルチャネルの数が増加し続けており、そこを介した顧客とブランドのやり取りも増える可能性があります。デジタルチャネルでは情報を簡単に得ることができるため、消費者やビジネスバイヤーがブランドの営業担当者と直接やり取りをする前に製品を購入することも珍しくありません。

企業のWebチャット、オンラインのレビュー、ソーシャルメディアなどは、顧客がそのブランドについてより詳しく知ることができるようなチャネルを作成しています。ブランド側にとっても、こういったチャネルで適切なデータ管理が施されていれば、顧客について学び、より深く理解できることができます。昨今では多くのチャネルやアプリケーションが混在していますが、このようなテクノロジーをうまく利用することが理想のビジネスを実現させるカギとなります。

それぞれの顧客についてきちんと把握し、何を求められているのかを理解しようとするとき、大半の場合においてデータに関する課題が浮上します。多くの企業ではデータ整理が行われておらず、サイロ化や重複など、滅茶苦茶な状態になっています。これは、企業が時間と共に規模を拡大するにつれて合併や買収などを行った際、複数ある顧客データのセットが統合されなかったことが原因である可能性があります。もしくは、事業部、製品、部署などの間で連携をとらないままシステムがセットアップされたことでサイロや重複が発生している場合もあります。

しかし、どんなに滅茶苦茶な状態であったとしても、顧客を理解し、求められるものを予測し、企業と顧客との最適なやり取りを実現するカギとなるのがデータなのです。データを活用することで、マーケティング、販売、カスタマーサービスなどの担当者は顧客ひとりひとりに対応したコミュニケーションをとることができるようになります。

サイロを分解し、一元化、クリーニング、強化、管理などを通してデータを実用化させれば、顧客中心主義の実現に大きく役立てることができます。これは、顧客データのみに関する話ではありません。カスタマーエクスペリエンスには、製品、財務、サプライヤー、従業員などが関係していますし、ソーシャルメディア、チャット、その他の非構造化データソースから得るデータも含まれています。データに関する課題は、きちんと取り組むととても困難であると同時に、やりがいを感じられることでもあるのです。

顧客中心主義の前に立ちはだかる壁を壊す方法

顧客中心になるために踏むべき最初のステップは、顧客と直接やり取りをするかどうかに関わらず、リーダー、マーケティング、販売、サービス、サポート、財務など、すべての従業員で課題に取り組むことです。

顧客が製品を認知し、購入の検討をしている段階では、初期対応の大切さをすべてのチームが認識していなければなりません。マーケティングを成功させ、顧客を遠ざけないようにすることが重要なのです。最初から必要なデータが揃っていない場合もあるかもしれません。 しかし、データは時間の経過とともに追加され、顧客のプロファイルに関連付けられるようになります。それによって、将来的な意思決定が導き出され、対象を特定し、パーソナライズされたキャンペーンを行いやすくなります。

見込み客が顧客へと変わっていくにつれて、顧客中心のプロセスを念頭に置いて摩擦のないプロセスを心がける必要があります。また、顧客とのコミュニケーションに対して継続的な価値を追加していくことで、その顧客はブランドを単に支持するだけでなく、リピーターとなり、ブランドに対する絶対的な信頼感を抱くようになります。

顧客中心主義の達成に役立つベストプラクティスをいくつかご紹介します。

顧客第一の文化を構築すること:CEOから現場のスタッフまで、すべての従業員が熱心に顧客理解に努め、それをビジネス上の使命、価値観、ビジョンに組み込む必要があります。

データを改善すること:データの品質、一貫性、可用性を向上させることで、ビジネスにおけるあらゆる段階において、すべての従業員が顧客を識別し、理解できるようになります。大半の企業では、品質低下や使いにくさなどが原因でデータを十分に活用できていません。これに対しては、AI技術を用いた自動接続を活用することで、個人の識別やそれぞれの顧客に対するオファーの改善につなげることができます。

顧客のフィードバックを集めること:顧客が何を望み、何を必要としているかを実際に聞くことで、顧客をよりよく理解することができます。得られたフィードバックに共通している事柄はないか調べてみましょう。すべての顧客が常に正しいとは限りませんが、同じようなフィードバックが複数の顧客から得られた場合は耳を傾けることが大切です。

従業員に報酬を与えること:従業員に対する補償、表彰、報酬などを、顧客のニーズを満たすことと直接的に結び付けます。従業員から企業に対する信頼を得ることで、顧客第一の考えも各自のなかでより根付くようになります。

長期的な目線で考えること:一度限りの取引で終わる顧客よりも、リピーターの顧客の方が企業にとってより価値のある存在と言えます。快適なエクスペリエンスを提供することで、顧客は企業に対して親近感を抱き、自分をきちんと認識してくれていると感じるようになります。長期的な関係を築くことは顧客の企業に対する信頼を高め、結果として収益増をもたらします。これはまさに、カスタマーエクスペリエンスが企業に与える影響を実感できるプラクティスです。

顧客中心主義から得られるメリットの測定

顧客中心の戦略や文化を構築するうえで重要であるもう一つのステップは、目標達成のためには何が機能し、何を調整する必要があるかを知る判断材料となる主要業績指標(KPI)について把握することです。

測定することができれば、それを管理することもできるようになります。顧客維持率、解約率、顧客満足度(CSAT)、顧客努力指標(CES)、顧客内シェアといった指標を活用することで、ビジネスにも好影響を与えることができます。顧客中心のマーケティング、販売、サービスは、測定可能なKPIと一致している必要があります。製品やチャネルごとの収益などの指標だけでなく、顧客の行動、感情、価値といった指標を測定することも顧客中心のサービスを展開するうえでとても重要です。

たとえばマーケティングの最高責任者の多くは、ある一人の顧客が将来的にその企業と企業関係全体へ寄与する価値を測る顧客生涯価値(CLV)の向上に焦点を当てています。これは、マーケティングやその他の戦術が、長期的かつ収益性の高い顧客関係を確立するためにどの程度うまく機能しているかを示す指標です。たとえば、顧客の支出がいつもより下回ったタイミングなどが確認できます。そのため、解約の可能性がある場合、初期の段階でそれを見つけることができるのです。また、CLVデータを使用し、ターゲットを絞ったプロモーションやオファーを行うことで顧客のセグメント化をはかることもできます。

もう一つの重要な指標として挙げられるのが、ネットプロモータースコア(NPS)です。 NPSは、特に接客業のブランドで広く使用されており、「(そのブランド)を知り合いに勧める可能性はどのくらいあるか?」ということを測る指標です。これによって、ブランドの成長度や、顧客からの全体的な認識を測定します。補足的な要素としてNPSを知ることで、カスタマーエクスペリエンスを向上させるための実用的な洞察を導き出すことができます。

顧客中心主義へ突き進む

人々が何か買い物をする際は、信頼できる人から購入するものです。また、顧客が取引をする相手は企業内の一部門ではなく、企業そのものです。そのため、組織内において顧客中心主義を促進させることがとても重要なのです。顧客中心主義が浸透している場合、リピーターの顧客からより多くの投資を得ることができます。長期にわたって築き上げられた信頼があれば、万が一、何かしらのミス(オファーのタイミングを見誤る、在庫切れ、商品の誤発送など)があったとしても、寛容に受け止めてもらえることが多くなります。しかし、迅速な解決を怠って信頼を裏切った場合、その顧客を永久に失ってしまうかもしれません。

顧客を維持し、顧客内シェアを拡大するには、適切な文化、データ、テクノロジーのもとで顧客中心の販売、マーケティング、カスタマーサービスを推進していく必要があります。顧客中心のビジネスを成功させる基盤となるのは、プロセスの合理化、データ管理のコスト削減、企業全体で信頼度の高いデータにアクセスできるテクノロジーです。

顧客中心の戦略を確立することで、適切な情報を適切なタイミングで得て競合他社から一歩リードすることができます。また、健全な顧客関係や、企業の価値を最大化することにもつながります。

電子ブック『カスタマーエクスペリエンスに関するマーケティング担当者向けガイド(A Marketer’s Guide to Customer Experience)』では、長期的な戦力に向けた、実用的なカスタマーエクスペリエンスのヒントとガイダンスについてご説明していますのでぜひご覧ください。


本ブログは2021年3月29日のJennifer McGinnによるWhat Is Customer Centricity and Whyの翻訳です。