「私に何の得があるのですか?」というデータ消費者の疑問。答えられますか?

“What’s in it for me?”というフレーズをご存知ですか?直訳すると「その中に私のためになるものがあるのですか?」となりますが、これは人から何かを頼まれた時の決まり文句で「私に何の得があるのですか?」という意味です。

データガバナンス戦略の構築には、組織の中でさまざまな役割を担う人々の理解と協力が必要不可欠です。こうした人々がデータガバナンス戦略に対して「私に何の得があるのですか?」という疑問を抱いた時に、CDO(最高データ責任者)は彼らを納得させる答えを用意しておかなければなりません。

CDO(最高データ責任者)は、リスクとコンプライアンスを管理するデータガバナンスの構築に責任がありますが、今では、高品質なデータへの迅速かつ容易なアクセスを提供し、意思決定を迅速化することによって、ビジネス価値を推進する役割も担っています。このように組織全体が取り組まなければ成功しないデータガバナンスを実現するためには、さまざまな部門のデータ消費者が共感できるような方法で、その価値を伝えることで、彼らの賛同を得なければなりません。

欲しいデータを手に取って「購入」する

「私に何の得があるのですか?」というデータ消費者の疑問に、通り一辺倒に答えることはできません。データ消費者のそれぞれのニーズに合った答えが必要です。例えば、組織の中には、データサイエンティストが不在でも、データを使って新たな知見や新しい製品、新しいサービス、新しい市場を見つけなければならないような部門があります。彼らは業務プロセスのことはわかっていても、技術的なスキルはあまり高くなく、データがどこにあり、どのようにアクセスすればよいのかはわからない「データのシチズン(市民)消費者」と呼ばれる人々です。

今の彼らは、昔ながらの方法でデータを入手するしかありません。例えば、プロジェクトのために必要なデータをチケットで申請したり、財務部門の同僚に電話をかけて問い合わせたりしています。レポートを要求すれば、見当違いなレポートが戻ってくるかもしれません。このようなデータの市民消費者にとって「得になる」データガバナンス戦略とは、必要なデータを簡単に見つけられて、より生産的に働くことができる仕組みです。

例えば、お店の棚に並ぶ商品のようにデータが陳列されていて、データ消費者は、その中から欲しいデータを選ぶことができます。データという商品には適切なラベルが貼られており、商品の内容に詳しい人の連絡先が記されていて、注文手続きも簡単です。また、注文する際には、どのようにデータが届くのか、どのように注文を追跡できるのかを知ることができます。つまり、データの市民消費者にとって得になるのは、こうした「データのマーケットプレイス」なのです。

組織全体でデータがどのように使われるのかを知る

私が以前働いていた大手製薬会社の例をお話ししましょう。その当時、私たちは医薬品の製造コストを追跡することに苦労していました。医薬品は、発見と開発、前臨床/臨床研究、臨床試験といった複数のフェーズを経て販売に至るのですが、そのライフサイクル全体を通して発生するコストを調べて、財務的な影響を計算するのは大変な作業でした。なぜなら、複数フェーズにわたって関連部門を通過するたびに医薬品のコードが変わることが多かったからです。つまり、共通の識別子を使って、ライフサイクル全体を通じてデータがどのように扱われるのかを明らかにする必要があったのです。このような場合にデータマーケットプレイスがあれば、利用したいデータがどの部門やプロセスを経てきたのかを知ることができるので非常に有効です。

データのマーケットプレイスでは、データの来歴を明らかにするリネージマップを利用することができます。これがあれば、データの利用者は、自分の業務のためだけでなく、関連する他の部門がどのようにデータを利用しているのかを意識して、「このデータはどこから来たのか?」「次にこのデータを利用するのは誰か?」「営業部門あるいは生産部門で使われるのか?」などの疑問をクリアにしたうえで、データが自分の使用目的に適しているかどうかを確認することができます。

つまり、データのマーケットプレイスがあれば、データの内容を知り、組織の他の部分とのつながりを理解した上でデータを利用できるようになり、仕事の有効性を高めることができます。

短期間で価値を創造する

では、データのマーケットプレイスにどのようなデータを陳列すればよいのでしょうか?

何よりもまず、組織のビジネス目標を支え、関係者にとって「得になる」データである必要があります。

ここで、あるお客様の例をご紹介しましょう。老舗の大手保険会社は、続出する新興企業との競争に挑むことになりました。競争力を維持するためには、製品中心の考え方から顧客中心へシフトする必要がありました。また、保険代理店の維持率が低く、その採用方法を見直す必要もありました。そこで同社は、データを取り扱う方法を根本的に見直すことにしました。

このお客様の例のように、新しいビジネスの優先課題のデータガバナンス戦略を立てるためには、まず関係部門にヒアリングをして、次のような点を確認する必要があります。

  • どのような課題があるのか?
  • どうすればビジネス目標を達成できるのか?
  • 何もしない場合どのようなリスクがあるのか?

こうしたヒアリングは、関係部門のデータ利用者とって「得になる」データを理解するための出発点となります。また、質問をすることによって、ビジネスの変革あるいは目標の達成に直接責任のある部門、あるいはイニシアチブを持つ部門を明らかにして、その関係をマッピングすることができます。こうした情報をもとに、データマーケットプレイスに並べるデータを決定することによって、データ利用者は、関連性の高いデータに簡単にアクセスして、情報に基づく意思決定を行い、短時間で価値を創造できるようになります。

「何の得があるのか?」をできるだけシンプルに伝える

新しいデータガバナンス戦略は、できるだけシンプルに伝えることで、データ消費者の理解を得ることができます。「メタデータ」「データスチュワード」あるいは「データ品質」などのわかりずらい言葉やフレーズは避けて、日常的に利用する言葉を使う方が、意図がよく伝わります。

あるヨーロッパの金融会社のCDOは、次のように説明することで、データマーケットプレイスの管理に関わる人からデータ消費者に至るまで、幅広いユーザーの理解を得ることができました。

「基本的に私たちが作ろうとしているのは、データのスーパーマーケットです。例えば、財務部門のデータ市民消費者であるあなたは、商品(データ)を棚から取り出して確認することができますし、質問があればスタッフが答えてくれます。私たちは、あなたが棚から取り出したデータをいつでも自信を持って利用できるように、そのラベルと品質の向上にできる限りの努力を行います。」

コミュニケーション戦略は、データ消費者にとって「何の特があるのか」を説明する上で非常に重要です。理解しにくい用語や一般的でない用語は避けて、スーパーマーケットのように理解しやすい比喩を使うようにすれば、データ消費者の賛同と理解を得やすくなるでしょう。

データマーケットプレイスについて、さらに詳しくは、ソリューション概要「データの民主化とガバナンスを実現するデータマーケットプレイス~組織のあらゆるユーザーのデータ要件に応えるデータ民主化マーケットプレイス」をご覧ください。


本記事は7/4のブログ「The Business Value of Data Governance: Describing “What’s In It for Me?”」の抄訳です。