IoT構築のカギ!IoTデータ連携のポイント

あらゆる業界で、IoTを使ったビジネスチャンス創造のための取り組みが進んでいます。顧客との距離が近く、最も接点の多い小売業界や消費者向けサービス業界は、顧客への理解を深めるうえでIoTデータを活用することのメリットにいち早く目をつけた業界の代表例です。これまで知り得なかった顧客に関する情報を、実店舗だけでなく、スマホやオンラインサイトから収集し、顧客行動を分析して、顧客のニーズにマッチした商品やサービスを提供することで販売を強化しています。

また製造業においても、IoT導入によるスマートファクトリーが進んでいます。国内外を問わず生産設備に取り付けたセンサーから稼働状況を24時間リモートで監視し、作業員のタブレット端末から生産工程の進捗状況をリアルタイムに可視化することで、納期遅延や品質劣化に関わる問題、生産現場の安全性を脅かすリスクに早期に対応し、生産管理の煩雑性を解消しています。

IoTにはデータ連携が重要

IoTを導入する理由は、業界や組織によって異なりますが、多くの場合は、現場業務の効率化や脱属人化による生産性の向上、新商品・サービスの創出による売上改善、顧客満足度の向上を主な目的としています。

例えば、売上改善と顧客満足度向上のためにIoTを活用したい小売企業が、店舗入口のセンサーや監視カメラ、商品につけたタグ、来店者のスマホをIoTのエッジデバイスとして導入するとします。これらのデバイスから収集できるのは、曜日や時間帯毎の来客数、監視カメラの映像、レジで読み取った商品バーコードと売上数量、金額、顧客のスマホに加算されたポイントなどのデータでしょう。しかし、どれだけ高度なテクノロジーを駆使してデータを集めたとしても、データがひとりでに価値を生み出してくれるようなことはありません。商品や店舗、顧客、販売に関するデータと関連づけて、分析することによってはじめて、新たな商機につながるインサイトを見い出すことができるようになります。

店舗管理システムにある品揃えや棚配置に関するデータ、商品管理システムにある属性データ、販売管理システムにある顧客データや売上データと、店舗のIoTデバイスから集めたデータを連携して、顧客の行動をビジネスコンテキストの中で分析することができれば、商品が売れる理由とそうでない理由が明らかになり、顧客の動線を意識した効果的な店舗レイアウトが可能になり、顧客ニーズに合った商品の品揃えや補充計画あるいはキャンペーンを実施して、顧客の購買意欲を掻き立てたりすることで、ムダをなくして売上を改善するという当初の目的を達成することができます。

IoTの導入にあたって一番重要なことは、スマホやセンサーなどのエッジデバイスから、いかに多くのデータを集められるかだけではなく、それらを連携させて、社内外の既知の情報と関連づけながら新しい知見と事象の関係性を見い出せるかどうかです。

商品やサービスが実際に消費/生産される現場で、リアルタイムに起こっていることを知ることができる貴重なIoTデータを活かせるかどうかは、リアルタイム性や他データとの関連付けなどのデータ連携方式にかかっているということです。

IoTデータ連携における課題と押さえておくべきポイント

IoTデータの連携基盤を作るにあたっては、従来の統合アプローチと何が異なるのかを知っておくことが重要です。ここでは、IoTデータの5つの特性から、IoT特有の考慮すべきポイントについて紐解いてみます。

特性その1:データの種類、形式、量が非常に多い

設備に取り付けられたセンサーや監視カメラ、商品についたタグやバーコード、個人のスマホやタブレット、GPS、ドライブレコーダー、オンラインサイトなどのIoTエッジデバイスからは、さまざまな形式の膨大な量のデータが送られてきます。生産設備のセンサーは、温度や湿度、光量、圧力、傾き、振動などの稼働状況や環境を知るためのデータを24時間生成しています。また、店舗や人々が行き交う場所では、音声や画像、動画データが記録され、ネット上のショッピングサイトやSNSでは、顧客の行動を知るカギとなる個人データがやり取りされています。

このように非構造化データが混在する、多様かつ膨大な量のデータを処理するには、従来のオンプレミスのデータベースを中心とした管理手法ではなく、クラウドデータレイクなどのストレージサービスを利用して、データを取得したままの形式で蓄積する必要があります。

特性その2:データのリアルタイム性(鮮度とスピード)が高い

IoTを使って明日のビジネスを予測するためには、ミリ秒レベルで記録されるIoTデータの鮮度を損なわないように、関連する業務システムや分析ツールとすばやく連携できる必要があります。5Gが実用化されれば、通信できるデータのスピードや容量は格段にあがります。

IoTデータ連携に求められるスピードを満たすためには、従来のように高度な技術的スキルを持つ人間が、データ連携のためのプログラムを一から開発するような時間とコストのかかる方法ではなく、接続アダプターやAPI開発ツールがあらかじめ用意されているデータ統合ツールを利用することで、開発工数を大幅に減らすアプローチに切り替える必要があります。

特性その3:エッジデバイスとの連携方法が用途によって異なる

IoTエッジデバイスからデータを取り込む方法は、一通りではありません。例えば、スマートメーターやリモートモニタリングのデータは、デバイスから直接クラウドあるいはゲートウェイを介して転送し、消費者向けの商品・サービスのデータは近距離通信でスマホを経由してから転送、工場の生産ラインからのデータは専用データサーバーを中継させるなど、用途によって異なります。このように、多様なアーキテクチャに柔軟に対応するためには、連携先と連携元の技術的な仕様の違いを吸収し、テクノロジーの進化に合わせて柔軟に変更できるようなデータ統合プラットフォームが必要になります。

特性その4:関係者が広範囲にわたる

IoTデータを活用するためには、社内の異なる部門だけでなく、社外のサプライヤや契約生産企業、輸送会社を含むサードパーティなど、実に多くの関係者とつながる必要があります。それ故に、関係者間やシステム間で異なる用語を統一してやり取りするための共通の辞書が必要になり、連携するアプリケーション毎に異なるテクノロジーレベルや同期のタイミングの制約を解消するための共通のデータ連携基盤が必要になります。

特性その5:多くの個人データや機密データが含まれている

消費者向けの商品・サービスのIoTであれば、顧客のスマホやSNS、Webサイトの閲覧履歴から得た顧客のプライバシーに関わるさまざまな個人データがやり取りされます。また、産業用IoTの場合は、商品の差別化に関わるような製品設計・開発、生産関連の機密データが、ネットワークを介してやり取りされます。さまざまなモノと人がリアルタイムにつながるコネクテッドネットワークのどこかでサイバー攻撃が発生すれば、その影響は、IoT機器あるいはシステム単体だけでなく、ネットワークを介してサードパーティにまで広範囲に及ぶことになります。

このように、組織の壁を超えて複数の関係者間でやり取りされるデータの安全性と整合性を確保しつつ、最新の個人情報の保護規制や業界特有のセキュリティ要件へのコンプライアンスを担保するためには、データへのアクセスを制限し、保管と利用に関わる重要なプロセスを自動化して、継続的にモニタリングできるようなデータセキュリティとデータガバナンスの仕組みを構築することが必要です。

まとめ

ビジネスチャンス創造のためにIoTデータを活用できる場面は、無限大に広がっています。しかし、より多くのデータを集めることに専念しているだけでは、せっかくの価値を引き出すことはできません。IoTデータをビジネスコンテキストに関連づけて分析することで、はじめて新たな関係性やインサイトを発見することができます。そのためには、社内外を問わず、あらゆる関係者とつながって、いかにスピーディにデータを連携ができるかどうかが重要です。日進月歩で進化するテクノロジーに追随し、予測不能なあらゆる変化に柔軟に適応して、増え続けるデータ要件に合わせて拡張できるデータ連携基盤があるかないかによって、今後のIoT活用による競争力の優劣が分かれることになるでしょう。