デジタルトランスフォーメーションでエンドユーザーが反乱を起こす理由 -CIOの「I」の意味が変わる時-

全社のデジタルトランスフォーメーションに向けて、イニシアチブの先頭に立って指揮を執っている情報管理の責任者(CIO)であれば、すでに次のような経験をしていることでしょう。

 

  • 部門横断的に実行委員会の立ち上げ
  • デジタル化に向けた戦略の策定
  • テクノロジーのアーキテクチャを設計
  • 業務プロセスの再編成を考慮した現実的な導入手順を策定

このようにデジタルトランスフォーメーションを成功させるために必要なことはすべて軌道に乗せたつもりかもしれません。

ところが、実際にプロジェクトが始まった途端に様子が変わります。

突然、あらゆる部門から全面戦争のような反抗を受けます。長年やってきた業務手順が変わることへの反発や、新しいシステムは覚えにくいと不満を言われ、新しい手順に変わることで業務が増えることにエンドユーザーたちは苛立ちを隠しません。こうした不満が爆発して、今まで調整してきた計画が突如として脱線するのです。すると、社長を含めた経営幹部たちは、味方であったにも関わらず「一体どんな戦略と導入ステップで始めたのだ?」とあなたを責めるかもしれません。

このような状況で、エンドユーザーのせいにするのは簡単です。今まで何度も彼らの管理者たちと話し合ったうえで戦略を立てて計画してきたでしょうし、変更点があれば常にそれを組織の全員に通達してきたはずです。情報管理部門のメンバーたちも、エンドユーザー向けのトレーニングや今後どのように変化するのかについて何千通ものメールを送ってきたのですから。「なぜ、それがわからないのだ?」と言いたくもなるでしょう。

 

リーダーシップの変化

お察しの通り、トランスフォーメーションに伴う変化を先導するのに「これだ!」というルールなど存在しません。組織によって社内文化は異なります。IT業界では、大部分の社員がエンジニアリングやコンピューターサイエンスにどっぷり浸かっているのは珍しいことではありません。こうした企業の社内文化は、技術的な熟練度を極めることに比重を置いていることが多いので、トランスフォーメーションに伴う技術的なトレーニングは、ごくシンプルなもので事足りるだろうと考えてしまいます。しかしこれが失敗につながる誤解であり、新システムを覚えることへの不満ではなく、作業するやり方が変わることに反発する原因となるのです。

トレーニングを実施することはもちろん役には立ちますが、デジタルトランスフォーメーションを成功させるには、新しいシステムや新しい画面の操作方法を教えることよりも、はるかに多くのことが必要なのです。技術的なトレーニングだけでは壁にぶち当たって頓挫する可能性が高いでしょう。変わることは誰にとっても難しいのです。「なぜこれが必要なのか?」は受け入れても、「何をどのようにすればよいのですか?」と質問してくる人たちもいれば、もっと重要な論点として「そもそも、なぜやらなければならないのですか?」と疑問が拭い去れない人たちもいるでしょう。

技術的なトレーニングは、エンドユーザーが受け入れなければならない変化や業務がどのように変わるのかについて教えてくれません。忘れてはならないのは、今からやろうとしているトランスフォーメーションとは、社員たちが長年従ってきたワークフローやプロセス、社内文化や習慣を変えるということです。デジタルトランスフォーメーションとは、情報やプロセスをデジタル化することであり、組織を変えることであり、あるいは集めたデータを使ってまったく新しいデジタル商品を作って売ることかもしれないのです。当然のことながら、これは、新しいシステムとその上流と下流のプロセスが連携することで、全社レベルで成果を出す必要があることを意味します。

部門最適化が目標になっているような今日のほとんどの組織で行われている業務とは、まったく異なることです。例えば、ある小売企業が、ひとつの販売チャネルだけでなく、店舗で買い物をする顧客とオンラインを利用する顧客の購買エクスペリエンスを最適化する方法を模索しているとしましょう。これを実現するためには、おそらく今までやってきた方法を新しいやり方に変更し、新しいスキルを覚え、組織の壁を破るような努力をユーザーは強いられることになります。それだけでなく、これまでは必要だった担当者が要らなくなり、一方で別の担当者が短期間で非常に多くの作業を要求されることになるかもしれません。あるいは、今まで存在しなかったまったく新しい部門が必要になるかもしれません。

要するに、デジタルトランスフォーメーションを先導するあなたは、嫌われものになるのです。少なくともはじめのうちは・・・

変化を受け入れる体制を作るには、ユーザーに全体像を3つの視点から完全に理解してもらう必要があります。1つ目はメリット(目指す最終形)、2つ目はデメリット(現状)、そして3つ目は(その間に経験する)辛い過渡期です。

 

メリット

メリットを理解してもらうのは、簡単なように思われるでしょう。目指す最終形と、それによって何ができるようになるのかを説明すればよいのです。しかし、会社にとってメリットであっても、エンドユーザーにとってメリットがあると全員が納得することは期待できません。「それをやる私のモーチベーションは?」と持ち掛けてくるかもしれません。デジタルトランスフォーメーションを先導する情報管理の責任者は、他の経営幹部たちと密に手を取り合って、エンドユーザーにメリットを理解してもらえるように説得する努力を惜しまないことです。

我が社の生き残りをかけたプロジェクトなのだ!という現実的な理由を言えば、聞く耳を持つエンドユーザーもいるでしょうが、ほとんどのエンドユーザーが知りたいのは、トランスフォーメーションによって彼らの仕事がどう良くなるのかです。彼らが苦痛に感じている業務課題を解決できるという具体的な例を示すことができなければ、イニシアチブ全体をリスクに晒すことになります。組織全体のすべての人々がどのような影響を受けるのかということをゆっくり理解してもらいながら前に進めることで、新しいシステムやプロセスを覚えることへの痛みを和らげ、「全員が一致団結して果たすのだ!」という意識改革を行ううえで、大いに役立つのです。

デメリット

トランスフォーメーションのためには、新しいシステムやプロセスも必要ですが、これまでビジネスの根幹を支えるために進化してきたものの、根本的に非効率的で壊れている既存のシステムやプロセスの改善あるいはリプレイスも必要になります。トランスフォーメーションを成功させるためのカギは、持続的にエンドユーザーをサポートすることです。それには、変化によって業務にどのような影響が出るのかをトータルに評価できるキーマンとなる業務担当者を特定し、なぜこれが最善の戦略なのかについて説明することが不可欠です。

キーマンとなる業務担当者たちは、ある分野にだけ長けている専門家たちとは異なります。例えば、営業部門の売上を計上するために現在使っているシステムやプロセスについてはよく知っている人がいるかもしれませんが、売上計上のプロセスをエンドツーエンドに把握している人こそが、変更するかどうかを意思決定できるキーマンです。さらに、この人が変化の提唱者となって、重要なメッセージを部門内に浸透させると同時に、問題があればトランスフォーメーション実行チームや情報管理の責任者に報告する責任を負うことになります。

 

辛い過渡期

これは、すべてが流動的になっている変化の真っ最中で経験することです。例えば、素晴らしいデザインのキッチンにリフォームをすると決めて契約にサインした後に、完成するまでの1か月間はガレージ暮らしになると気づいた時に似ています。家の中がひっくり返った状態になり、ペットが驚いて興奮し、子どもたちは不安定になり、あと何日経てば元のように家で暮らせるようになるのか、と思い始めます。この期間は、全員が普段よりも多くのことをやるように言われ、中には普段以上に時間がかかることもあります。この辛い過渡期は、経営者から部門長、部門担当者、IT担当者を含めた組織のすべての関係者間で状況を共有しながら進めなければなりません。

CIO(最高情報責任者)である私が、友人のCIOと話す時に、お互いに同感することがあります。それは「変更管理―Change Management」あるいは「変更リーダーシップ―Change Leadership」というトピックについて語るのは、非常に無意味で付属的以外の何物でもないということです。ソリューションを取り入れることがビジネスの未来の中核となるという、より大きなメッセージを読者の皆様に理解してもらえるように、「トランスフォーメーションの適用」あるいは「ビジネス イネーブルメント」などのテーマについて話すべき時が来ているのかもしれません。

 

あなたは、CIO(Chief Information Officer最高情報責任者)ではなく、CIO(Change Inspiration Officer変更啓示責任者)になる覚悟はできていますか?


※本ページの内容の一部は2018年6月4日更新のUS Blogの抄訳です。

The New CIO: Change Inspiration Officer

著者:SVP & Chief Information Officer, Graeme Thompson