【パートナーブログ:B-EN-G】MDM構築のポイントとは?~運用経験からの考察~

東洋ビジネスエンジニアリング株式会社様からは、マスターデータ管理の運用経験にもとづく、MDM構築のポイントについて寄稿いただきました。

プロジェクトの成功のカギを握る設計のポイントとは何か、ぜひご一読ください!

 


 

グローバル市場でしのぎを削る企業にとって喫緊の課題として挙げられているのが、世界各地に分散する事業拠点に横串を刺し、業績や生産性などの指標を可視化する統合経営基盤の構築です。マスターデータの整備・管理は欠かすことのできない要素であり、したがってマスターデータ管理システム(Master Data Management System、以下、MDM)は、数あるシステムの中でも中核であるといえます。

筆者は、ある製造業のMDM導入プロジェクトに参画しましたが、幸運にも、構築フェーズのみならず稼動後の運用フェーズにも数ヶ月携わることができました。この運用の期間で見えてきたこと、実感したことが多々あります。今回は運用経験者として、“MDM構築のポイント”のうちの一つをご紹介したいと思います。

 

■変わるMDMの目的、変わる条件

ひと口にMDMといっても、企業ごとに追求するグローバル経営やそれを支える基盤のあり方によって、データをどう実装するかが大きく違ってきます。

昨年まで担当していたプロジェクトでは、多様な業務データの入力からグローバル統合までを全面で支えるMDMの実現を目指してしていました。今、携わっているプロジェクトでは、MDMは、業績管理の精度向上や業務最適化などに直接的に貢献するというよりも、その下支えの位置づけです。

既存の業務システム単位で、すでにグローバル統合を完了しているマスターがあり、さらにそのデータを用いて連携している周辺システムも数多く存在します。そうした業務システムへの影響を最小限に抑えつつ、新しいMDMへのスムーズな移行を実現することも今回のプロジェクトの大きなポイントです。また以前のプロジェクトでは、対象外だった複数システムへのリアルタイムでの情報配信も要件として示されています。

後の運用フェーズを考えれば、膨大な手間を発生させる、非常に非効率なMDMになってしまうことは極力避けなければなりません。
「ああでもない」「こうでもない」「これはいけるかも」など思い巡らし、アーキテクチャーの設計に格闘する日々を送っています。

 

■経験から導き出したMDMのポイント
重要なのは、管理すべきデータ項目とその連携方法、連携先への依存性を最小限に抑えること

実際にプロジェクトを通して私自身が強く重要性を感じたのは、管理すべきデータ項目とその連携方法です。この2つをどう設計するかによって、MDMのあり方やその難易度が大きく変わってきます。特にグローバル統合経営基盤の視点から、この2つを考えた場合、個々の業務システムなど連携先との依存性をできる限り低くすることがポイントになります。

読者の皆さんにイメージしやすいようにもう少し具体的にお伝えしましょう。

データ項目について言えば、たとえばSAP ERPでもつ業務固有の情報をMDMに持つ場合、SAPを意識したチェックや加工をする必要があります。とはいえ、(読者の皆様の中にはご存知の方もいらっしゃると思いますが)SAPの内部仕様は公開されていないため、テストフェーズで多くの障害に気づき、その対応でプロジェクトの進捗上、非常にタイトになる可能性が高いです。例えば、同じSAP ERPでもインスタンスがばらばらでまったく別のものになっていたり、他のアプリケーションも追加となるとMDM側の構築負荷はさらに高くなってしまいます。

そして運用時においては、個々の連携先固有の業務依存性の高いデータ項目を管理し始めると、例えば大きな組織単位の価格の一斉見直しや管理単位の変更など、まとまった量でも全体ではない場合、運用担当者が組織の依頼を受けてMDMの操作をする、といった、作業のみならず責任的にも重い荷を背負う可能性があります。また、細かいデータを持てば持つほど、業務上急ぎ修正が必要なケースにMDMを通さずに、個別のアプリケーションにデータ更新をしてMDMとの整合性が取れなくなる状況に陥ることも考えられます。すると、MDMとアプリケーションのデータの乖離を運用の中でケアしていくことも必要になり、さらに運用負荷が上がっていきます。

管理すべきデータ項目は、MDM導入の目的に照らし合わせるのはもちろんのこと、運用し始めてからの具体的に起こりうる様々なケースを想定しながらの検討をお勧めします。

連携方式については、ファイル転送など従来のポイント・ツー・ポイントを基本とした直接的なデータ連携の仕組みが混在してしまうと、たとえばデータを渡す相手側に発生したハードウェア障害などの影響をMDMが受けかねません。その意味でもMDMにおける連携方式は、1対多あるいは多対1によるデータ連携をコントロールできるHubの仕組みを前提に設計を行うことが求められます。

ここまで、運用に携わった経験をベースに述べてきました。
読者の皆様のMDM構築のヒントになれば幸いです。

また、「どこまでをMDMの管理対象とし、どのデータを各業務システムで個別に処理すべきなのか――。」この切り分けは、グローバルMDMで最も難しい課題です。業務の細かい事情にも気を配りつつ、グローバル経営の目的に応じてデータ管理のポリシーを設計していくことが、MDM導入の成功の鍵を握っています。これについての具体的な例は・・・・別の機会にご紹介しましょう。

 

筆者:東洋ビジネスエンジニアリング株式会社
ソリューション事業本部クラウド&テクノロジー本部
ITアーキテクト
原田 剛志