ビッグデータ分析プロジェクトの実態(3):ビジネスケース

こんにちは。インフォマティカ編集部です。ビッグデータ分析プロジェクトの実態:マーケティングにおけるデータ活用

1月よりご紹介している自社のビッグデータ分析基盤導入プロジェクト紹介シリーズ第4弾です。

皆さんご存知の通りビッグデータ自体バズワード化しつつあり、またその価値が過大評価されているのでは?とも言われはじめています。そこで今回のブログでは、我々が”なぜ”ビッグデータマーケティングに取り組んだのかをお伝えできればと思います。このブログでは、ソリューションベンダーとしての視点ではなく、あくまでマーケティング部門のメンバーとしての視点で書きたいと思っています。

 

ビッグデータマーケティング、ではない?

多くの方はビッグデータマーケティングを、とにかく大量のデータを扱う事だと考えているのではないでしょうか?実際には、少量のデータでもビッグデータマーケティングが実現できます。インフォマティカでは一般的な企業が持つであろう規模のデータ量レベルですが、ビッグデータのアプローチをマーケティングに活かしています。

具体的にどの程度のデータボリュームかというと、、、

  • 毎日24,000件のデータをAdobe Analyticsから、20,000件のデータをMarketoから入手
  • Hadoop上では、Adobe Analytics用に593カラム、Marketo用に424カラム、Salesforce用に2,206カラム、合計3,223カラムを利用
  • Tableau上では更に少なく、30カラムをAdobe、14カラムをMarketo、4カラムをSalesforce用に作成(2016年2月時点では2つのUse caseでのみ活用。現在は大幅に拡張済み)
  • 現時点(2016年2月)でこのプロジェクトが始まって4か月ですが、合計で640GBのデータがHadoop上に存在

上記の通り、それなりのデータボリュームではありますが、一般的に“ビッグデータ”でイメージされるような膨大な量ではないことがお分かりいただけると思います。

 

ボリュームよりバラエティ

もしビッグデータがボリュームでないというのであれば、何がビッグデータなのでしょうか?

答えは、データの多種性や以下の様な複数のデータ構造を取り扱うことです。

  • 非構造化データ(例:Twitter等のテキスト)
  • 半構造化データ(例:Salesforceのテキスト)
  • 構造化データ(例:RDB等からくるデータ)

また、ビッグデータマーケティングはそこにアジリティも入ってきます。これはB2B向けマーケターにとっては最も重要なポイントです。

 

スキーマ・オン・リードの重要性

Hadoopを活用したビッグデータマーケティングは、旧来の構造化データのみを扱っていたデータウェアハウス(DWH)ベースのマーケティングとは根本的に異なります。Hadoopは大量のデータセットの処理を可能にし、またそれを保持します。“スキーマ・オン・ライト(Schema on Write)”をベースとしたDWHとは違い、Hadoopは“スキーマ・オン・リード(Schema on Read)”のフレームワークを使います。これは以下の様に非常に大きな違いがあります。

  • DWHの場合:データを集めてくる前にDWHに溜めるためのデータ構造を決める必要がある
  • Hadoopの場合:とにかくデータをレイクに集め、構造は後で個々のユースケースやクエリ単位で決めることが可能

“スキーマ・オン・ライト“では、決められたデータ構造と形式のみで、それ以外のものは一切受け付けません。元々決められた同じものをカウントするのは簡単なことです。ただ、様々なアングルでデータを分析したいという今日のニーズに応えるには、このような形は非現実的です。”スキーマ・オン・リード“の技術は次のような様々なメリットをもたらしてくれます。

  • 将来どういったデータを取りたいか、どういう観点で見たくなるか?を今の時点で全て想像、決める必要がなくなる。(その時点で取りたい、分析したいと思ったデータを取得可能)
  • 構成変更等のリクエストを毎回ITへ上げなくてよい(新しいレポートを作るたびに、ITにカラムの追加や新しいマッピングの作成依頼をする必要がなくなる)
  • 新しいデータソースを簡単に取り込める(どんな構造のデータであっても、システムを大規模更改せずに追加可能)
  • 数か月ではなく、数時間で新しいレポートの作成が可能(マーケターは顧客が実際に動いてるタイミングを見逃さず瞬時にアクションを起こすことが可能)

DWHでは上記のようなことは実現できません。非構造化データや複数構造のデータを同時に取り扱うことができず、また変更を加える場合には数か月という期間を要します。

インフォマティカでは、Adobe Analytics、Marketo、Salesforceから関連するデータを全てデータレイクに取り込みます。現時点では必要としないカラムも全て持ち込み、後で様々な組み合わせで遊んでみようと考えています。データレイクに全てのデータを取り込むことでユースケースをその都度アドホックに作ることができるのです。私はB2Bマーケティングの世界に30年ほどいますが、この技術がこれまで夢だと思っていた様々なことを実現してくれています。これにはとっても興奮しています。

 

DWHを捨ててはダメ!

ただ、間違えていただきたくないのは、DWH自体をダメだと言いたい訳ではないということです。企業データを扱う上で今でも非常に役に立ちますし、重要な財務系のデータを記録するシステムとしても有用です。分析結果に1円単位で正確性を求める場合、私はデータレイクはおススメしません。財務系のデータを1円のズレなくSalesforceの結果とマッチさせたい、等の要件の場合は構造化データを扱うDWHを活用するべきです。

しかし、どのキャンペーンで進めるか、どの商談を追い求めるかなど、データ主導でビジネスの決断を行う場合には、データレイクが提供する分析結果は十分な情報でありまた即座に取る事ができます。

 

一番の課題:データの散在

B2Bのマーケティング部門が抱える大きな問題は、データの散在です。我々はCMS、CRM、分析ツール、SEO、マーケティングオートメーション、ソーシャル等多くのマーケティングアプリケーションを使います(平均30種類以上とも聞きます)。またこれら全てのアプリケーションでデータが生まれ、またデータを使います。しかしデータレイクが無ければこれらのデータはサイロ化し活用することができません。

ビッグデータマーケティングを活用したビジネスケースを考える中で、我々はこれまでデータが散在するが故に苦労していた課題も解決できると考えました。ビッグデータマーケティング採用の最も大きな理由は、望むビジネスケースを実現しつつこれまで抱えていた課題を解決できると分かったからです。

 

ビッグデータマーケティングによって解決した課題

ビッグデータマーケティングを実現する前には、データの散在が以下の様な課題をもたらしていました。

統合したビューがない:データが各マーケティングアプリケーション内で閉じられている場合、チャネルAで実施した施策がチャネルBにどう影響をもたらしたか、等の分析ができない

会社単位で見れないMarketoとSalesforceはリードを主としたシステムのため、アカウント単位での行動・購買履歴等を一元的に見る事ことができない

顧客の興味がわからないデータが散在していると、各顧客が実際にどのソリューションに興味を持っているのかなどの把握が難しい

パーソナライズできない顧客の行動や振舞い情報含む360度ビューの可視化ができていないと、パーソナライズ化した施策を実行できない。ウェブやメールのセグメンテーションを考える上でも、顧客理解は重要

レポートの更新・修正が面倒既存のレポートにカラムの追加やデータの結合等の修正や更新を行う場合には、その都度新しいITプロジェクトの立ち上げが必要

プログラムの詳細が把握できないマーケティングアクティビティを組み合わせて行ったプログラムであっても、プログラム単位での結果しかわからず、アクティビティ単位など粒度を変えた結果分析ができない

売上へつながっているかわからないマーケティングで実施する各種プログラムが実際の売上にどう貢献できてるかの把握ができない

最後のポイントについて、我々マーケティング部門はパイプラインを作ることに注力し、またそれをベースに評価されます。しかし、そこで作ったパイプラインがどれだけ売上に繋がったのか、どのプログラムで得たパイプラインが一番売上に貢献できたのか把握できていませんでした。今ではマーケティングのチャネルやプログラム単位で、個々の商談にどのように貢献できたかを把握できる様になっています。

これらのリストはまだまだ書き続けることができます。貴社でも、まずは現状のマーケティング分析基盤で抱える課題を書き出してみてください。それらの多くはビッグデータマーケティングで解決できると気づくはずです。

 

もしビッグデータマーケティングを構築する上での一番のアドバイスをするのであれば、、、

  1. データ品質をしっかり管理できるようにしておくこと

なぜならHadoop上でのデータ分析は簡単に聞こえますが、誤ったフィールドからデータを持ってきて処理をするなど、間違いを起こすのも非常に簡単です。非構造データでは期待するメタデータがこないこともあります。レポートを作成する際には、必ず一度レポート内容をしっかり確認してみてください。もし何かが違うと感じたらじっくりデータを見直しましょう。信頼を得ることに比べ、信用を無くすのはとても簡単です。ここは時間をかけてダブルチェックを行いましょう。

  1. 軽い気持ちでやらないこと

ビッグデータマーケティングは非常に大きな時間とお金と努力を要する投資です。データレイクを買ってきて、ただプラグインすれば良いという様なプロジェクトではありません。

 

このブログを読んでいただくことで、ビッグデータマーケティングが決して不可能なプロジェクトではないこと、ただし様々な努力が必要となることを理解いただければと願っています。

次回のブログでは、ビッグデータマーケティングの実現に利用したテクノロジー全てをご紹介します。お楽しみに!

 


※本ページの内容は2016年2月3日更新のUS Blog の抄訳です。

Naked Marketing: The Busines Case for Big Data Marketing

著者:マーケティングエキスパート Franz Aman


【ビッグデータ分析プロジェクトシリーズ】

ビッグデータをフル活用したマーケティング分析事例 –個々のデータをつなぎ合わせて情報資産に-

ビッグデータ分析 プロジェクトの実態 (1):マーケティングにおけるデータ活用

ビッグデータ分析プロジェクトの実態 (2):重要な5つの基礎

ビッグデータ分析プロジェクトの実態 (3):ビジネスケース

ビッグデータ分析プロジェクトの実態(4):活用テクノロジー

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